トランプ関税と株価の波乱〜2025年4月7日から10日の日本市場を整理〜
◇
2025年4月7日、日本の株式市場は激震に見舞われた。
日経平均株価の終値は31,136.58円、前週末比2644円(7.9%)の下落で、史上3番目の下げ幅を記録した。
原因はトランプ政権が4月2日に発表した「相互関税」政策だ。
日本に24%、中国に54%の高関税が課されるとの声明が市場を揺らし、4月3日から株安が広がった。
しかし、10日にトランプ大統領が関税の一部を90日間停止すると表明。
日経平均は終値34,609円(前日比2894.97円、9.13%高)と急反発した。
この急落と回復の経緯について簡単に整理しておく。
◇
まず、「相互関税」とは何か。
トランプ大統領は再選後、「アメリカファースト」を加速させ、貿易不均衡是正を名目に強硬な関税政策を展開。
4月2日、180以上の国と地域を対象に、各国が米国に課す関税率に応じた報復関税を表明した。
日本への24%は自動車輸出への対抗措置、中国への54%は米中対立の激化を示す。
中国は34%の報復関税で対抗し、市場の緊張が高まった。(最終的には計145%)
7日の市場は全面安。
終値31,136.58円で、日経平均が7.9%、TOPIXが7.7%下落した。
トヨタ自動車は約5%、ホンダは4%超、ソニーは5%超の下落。
年間20兆円の自動車輸出のうち20%が米国向けのため、24%関税は企業に深刻な打撃だ。
8日は反発し、終値33,012.58円(6.03%高)。
9日は再び下落し、31,714.03円(3.93%安)。
10日は関税停止を受け、34,609円(9.13%高)で終了した。
◇
この波乱はグローバルな連鎖反応だ。
米国市場では、4日ダウが2231ポイント下落。S&P 500が4.84%安、ナスダックが5.97%安となり、アジア市場に波及した。
7日には大阪取引所で日経平均先物が2900円超下げ、サーキットブレーカーが発動。
10日の米国市場でS&P 500が9.5%上昇し、日本市場も連動した。
8日の上昇は米国株の落ち着きが後押ししたが、9日の下落は米中対立再燃への懸念が影響。
10日の急騰は関税停止と空売り勢の買い戻しが重なった結果で、トヨタが9%、東京エレクトロンが12.89%、三菱UFJフィナンシャル・グループが10.7%上昇し、99%の銘柄が値を上げた。
円安が1ドル155円を突破し、輸出企業に追い風となった。
◇
市場関係者の間では、「関税は交渉のチップ」との見方が根強い。
トランプ氏は過去にも高関税で譲歩を引き出したが、今回は規模が異なる。
現時点においても日米交渉の進展は不透明だ。
経済産業省の試算では、24%関税が1年続くと自動車産業で1兆円超の損失が発生。
中国との対立も続き、報復関税の応酬が懸念される。
10日の反発を受け、一部企業は米国生産拠点の拡大を検討し始めたが、コスト増への懸念も浮上している。
医薬品や一部半導体は関税除外で底堅いが、10日にトランプ氏が「医薬品への大規模関税」を予告し、新たな波紋を広げた。
銀行株は10日に8.51%上昇し、金融セクターの回復が目立った。
◇
短期的な波乱が注目されるが、長期視点も重要だ。
過去の貿易摩擦でも市場は回復してきた。
10日の急騰は売られすぎの反動と見られるが、アナリスト予測は分かれる。
「過熱感から調整リスクもある」との声と、「米中対立次第で下落が再燃する可能性」が共存する。
7日の急落から10日の急騰まで、日本市場はトランプ関税に翻弄された。
関税政策の行方と企業対応が次の局面を左右するだろう。
【参考】
終値ベースの推移
7日:31,136.58円(-7.9%)。
8日:33,012.58円(+6.03%)。
9日:31,714.03円(-3.93%)。
10日:34,609円(+9.13%)。